12月の活動
散りきったもみじを愛でる機会が多くありました。2枚目の写真は、「臼杵春芳・木と漆展」の会場、京都「仁風庵」のお茶室からの眺め、苔の庭を覆う「敷きもみじ」です。光栄にも、臼杵さん http://www.usuki-koubou.com/ の漆椀(写真右)でお抹茶をいただきました。この時の、もみじの絵付けのある水指は川尻潤さんのもの、折よく「思文閣ギャラリー」で川尻さんの陶芸展があり、もみじの陶屏を見ていました。
2学期の授業が終わってからすぐに、学生時代にも手掛けたことのある「陶板」を作り始めました。川尻さんの陶板や陶屏の立て方や吊るし方を、参考にさせていただき、また、「ミホ美術館」では「中世の六古窯」の、作者の知れぬ豪快で質朴な壺や甕をたくさん見ました。私にしかできない私らしい作品を作りたいと思いながら、土をたたいてたたいて成型中の、陶板・皿などです。
11月の活動
授業の合間には、展覧会や秘仏公開、お茶会などに足を運び、美しい秋の風情を満喫していました。写真は、興福寺「国宝公開2010」の折の北円堂の銀杏と、よく通る正倉院近くの景色です。
田原公民館(奈良市)の文化祭に、箱崎先生の教室「竜乃仔会」の作品展示とミニ作陶会があり、私の水滴も展示し、陶芸教室のポスターも書きました。ボタンは、アクセサリー感覚で使ってほしいと思い、台紙に留めてみました。右の写真は、箱崎先生の器に張さんからの依頼で私が文字を書かせていただいたものです。
奈良女書道部の学祭展
キャンパス全体が美しく紅葉し始めた11月5日(金)~7日(日)は、奈良女子大学の学祭でした。期間中、今年も書道部は、学館2階ホールで「学祭展」を行いました。部員と他校生(今年は3名)の、思い思い自由な創作作品と臨書作品が所狭しと並び、私も、十二支シリーズから「寅」と「卯」の陶印を出しました。
書道部員の家族や友達・OG・他大学の学生・家族連れなどで賑わい、会場内に設けた揮毫コーナーも好評で、筆で書く様子が楽しそうでした。
9月10月の活動
上の写真左は、私の書斎からの眺め、落葉し始めた雑木です。雑木林(庭)の向こうに若草山が望めるので、室号を「若草山陰居」といいます。リビングは「雀鳴室」といい、保田孝三先生の筆によるもの、文人趣味の夫の書斎は「希古斎」です。
8月末から授業が始まり、9月は、伊賀でのグループ展と書道のイベントの準備とが重なり、「折帖」の書作などは搬入日朝まで印を押していました。前もってなかなかできない性格ですが、筆を使う仕事を頼まれると断れず、看板、表札、Tシャツの文字、命名の色紙などは何枚も書きました。
池田満寿夫さんが生前、奈良県文化会館での講演で、(書道展を指してではなく、創作手段として)書が一番おもしろい!とおっしゃったことを、時々思い出します。私は、版画も小説も手掛けませんが、本当にその通りだと思いながら、書斎で筆を執っていました。
県高書研の学習指導研究会
私が勤めている奈良学園には書道部がないため、奈良県高等学校芸術科書道研究会の、生徒が主体となる行事にはほとんど行っていませんでしたが、10月7日(木)、学習指導研究会が東大寺学園であり、参加しました。鑑賞領域にある「拓本」の、珍しい実習の公開授業を参観し、協議、その後、奈良高校の喜多先生から篆刻の「側款の採り方」のご指導もありました。
授業の様子と、私が採った所々線がつぶれた下手な側款の拓。写真右の甲骨文の拓は、お隣で帝塚山高校の北田先生が手慣れた手つきで採られたもの、見事ですね。
「書くことは楽しいin奈良 ~大仏さんにラブレター~ 」開催
「書くことは楽しい in 奈良 ~大仏さんにラブレター~ 」のすべてのイベントに、多くの来場者・参加者をいただきました。主催は、奈良の文化力を盛り上げるために様々な活動をされているNPO法人「奈良21世紀フォーラム http://www.h7.dion.ne.jp/~nara21cf/ 」です。
全国の中高校生・大学生から、「大仏さんにラブレタ― ~奈良の都に想いを寄せて~」をテーマに募集した書作品の中から50点を選考し、10月2日(土)・3日(日)、奈良県文化会館で展覧会をしました。参加者の皆さんに喜んでいただけたことで、長い間の準備が面倒に思ったことも忘れ、遷都祭記念の年に相応しいよい仕事をさせてもらったのだと思いました。
会場の様子です。右の写真は、受付担当の奈良女子大学書道部員と一緒に。
作品応募の際に、出品票には、作品の題・名前・釈文と想いをご記入いただき、それをそのままキャプションとして使うことを明記していました。その出品票を萌黄色の画用紙に貼り、作品の下に展示し、そこに審査員(私)の短いコメントを添えました。私が子供の時の、審査員の方の寸評を今も覚えていて、温かい思い出となっているからです。作品なしではわかりにくいと思いますが、一部を紹介します。
会期中、東大寺大仏殿東回廊では、書家紫舟さんの指導で大仏さんにラブレターを書く「ワークショップ」を行い、中学高校大学生50名が参加しました。光明皇后1250年御遠忌の大法要をひかえて、東大寺大仏殿前には、立派な飾りがありました。
また、文化会館小ホールでは、朝日新聞編集委員小滝ちひろさんをコーディネ―ターとして「トークショー」を行い、西山厚先生の聖武天皇『雑集』(写真右のパネル)などの資料を交えた書は人なりのお話や、紫舟さんの龍馬伝を書いた時の思いなどから、満席の聴衆に、書の魅力や素晴らしさが伝わったと思います。
箱崎竜平・作陶展の壁面に
私もご一緒させていただいた4月の奈良市学園前での展覧会後も、箱崎先生は、注文の作品制作と並行して、東京や神戸の画廊で作品を展開されていました。9月3日(金)~30日(木)までは、先生がお生まれになった生駒市の、工芸&アンティーク「アレグレ」(東生駒2丁目)2階のギャラリーで作陶展がありました。1階は、陶磁器やアンティーク家具と輸入雑貨のお店です。
梁がむきだしになった豪快な造りの空間に相応しく、大皿などの大作がいくつも並び、壁面には私の書4点が掛けられました。置物に負けないインテリアとしての書作も、どんどんやってみたいと思いました。
「風と土のかたち」展 (伊賀市)
芸術の秋の到来です。やっと暑さが和らいだ9月19日(日)~26日(日)、「風と土のかたち」展 - 併設「風と土のふれあい芸術祭 Artist in Residence at IGA 2010 -」が開催されました。文化創造を基幹とした地域再生と交流を目的とした、NPO法人「Arts Planet Plan from IGA http://www.appfi.org/」主催の7回目の展覧会です。
自然の美しい伊賀市の中山間部、「メナード青山リゾート」近くの矢持地区市民センター(旧矢持小学校)が会場です。地元の作家さんや法人会員と法人活動に協力していただいた方々など65名の作品(絵画・陶芸・立体造形・木工芸・染織など、伝統工芸から現代アートまで)が、和室を含む6つの元教室に展覧され、多数のご来場をいただきました。
会場の様子です。右端の写真は、ギャラリートークをする漆絵画の山岸佳奈江さんです。
地元にホームステイしながら制作された、「風と土のかたち」展併催の「風と土のふれあい芸術祭 -Artist in Residence at IGA 2010」の招聘作家さんの作品も、公開されました。堀健さんは、電力や磁力で動く作品(キネティックアート)を手掛け、この作品は四畳半程もあり、虹を描く装置とも作品です。黒川さんの作品は、私も窯出しのお手伝いをした、陶による立体です。
下の写真は、私の出品作品です。左から、初めて額に入れてみた篆刻作品2点、陶硯・水滴などの「文房具」たくさん、法人の活動として3月に窯焚きをした「穴窯焼成」の作品(花器・文房具・アクセサリー)、陶印を押した折帖(2点、広げると5m)の書作品と陶印、です。他に、穴窯焼成の掛け花入れ5点も出し、ひとりでスペースを占領していました。
ジャンルの違う多くの方々と交流するこのような機会を大切にしながら、書のもつ古典的・固定的な技法や形式に囚われることなく、書の可能性や魅力をもっと出していきたいと思いました。
窯出しのお手伝い
「風と土のかたち」展の併催で、8月23日(月)~9月17日(金)まで、作家滞在型公開制作(Artist in Residence at IGA 2010)が行われました。招聘作家さんは、若き立体造形作家の堀健さん(キネテックアート)と黒川徹さん(陶)です。私は、9月17日、制作会場を訪ね、堀さんの完成間際の様子を見学し、黒川さんの窯出しに立ち会いました。
黒川さんは、耐火レンガで簡便な薪窯を組み(焚き口は3か所)、Residence期間中に制作した作品を、あぶりも含めて2日焼成されたそうです。(写真左2枚)この日は、窯出しといっても、窯(耐火レンガ)の片付けです。レンガを取り外していくと、だんだん中から燻瓦のように焼けた作品(3つの渦巻きと稜線による、ナマコ形の建築物のようなオブジェ)が現れるというものでした。窯焚き中は、雨が激しく降りご苦労もあったようですが、窯出しはワクワク楽しい作業でした。
ポスター(掲示物)の揮毫
9月19日(日)から始まる「風と土のかたち」展ー併設「風と土のふれあい芸術祭」-の看板や、期間中開催されるイベントのポスターを書きました。主催は、5年前から私も会員として参加しているNPO法人「Arts Planet Plan from IGA 」です。このようなアート系の団体に、書が加わることがあまりないようで、揮毫は私の出番となっています。
パソコンではなく手で書くこの仕事は、私の一番の得意分野といえるかもしれません。庭の緑を眺めながら、書道をしてきてよかったな、とつくづく思う時です。用が済むとゴミになってしまうボランティアですが、筆の活躍の場を与えられ、嬉しい気持ちで書きました。
7月8月の活動
7月2週目あたりから夏休みとなりました。猛暑を理由に避暑に赴き、ひとりで好きな展覧会を見たり、家族や友人とのんびり過ごしました。写真は、秋篠寺境内の緑の中の子供達と、私の実家から車で30分程の所にある「宇奈月ダム」近くの景色(中央に欅平までのトロッコ電車の軌道)です。
現代美術や絵画・陶芸などたくさん見た展覧会の中でも、三重県立美術館であった「川喜多半泥子のすべて展」の遊び心のある伸びやかな作品から、己の欲するものを造るという半泥子さんの闊達な生き方が、心に響きました。生きたように作風はあり、上手い下手も関係ないのだから、生きたいように生きる勇気があればいい、と教えられたような気がしました。
下の写真は、休み中に制作したものです。R工房からの夕焼けは、西の空だけでなく360°ブルーとオレンジの美しい錦、何度も時を忘れて見たこともまた(美術鑑賞に優る)この夏の記憶です。
「公募展」の審査会
「大仏さんにラブレター ~奈良の都に想いを寄せて~」の公募作品は、全国の高校生・大学生から408点寄せられました。こんなにもたくさんの作品が寄せられたことに感激しながら、今年一番の真夏日となった8月26日、エアコンのない東大寺二月堂北参篭所で、主催のNPO法人「奈良21世紀フォーラム」の理事長である東大寺の森本公誠長老始め、法人の方々と一緒に、私ほか2名が審査員として選考にあたりました。本来、作品に優劣を付けること自体本意ではありませんが、展示会場の都合上、入選作品50点を選びました。
これらの作品の展示によって、「書くことは楽しい」の事業の趣旨が、伝わるものとなればと思っています。
書道部の合宿
8月1日~3日は、東大寺学園書道部の合宿が自宅からも程近い東大寺華厳寮で行われ、日帰りで参加させていただきました。
書く題材(語句)を自ら選び、内容を理解して、先生からの手本をもらわないで作品作りをすることが、この書道部の伝統であり強みです。そのスタイルを当たり前に思って取り組む中高生の姿と、指導者の信念には、いつも感心させられます。毎晩恒例の合評会は、3時間も続き、私の帰宅は連日真夜中となりました。
8月9日~11日は、奈良女子大学書道部の合宿が、高野山のお庭の美しい宿坊で行われました。
参加者は、部員15名と他大学の学生(今年は1名)、みな根気強く熱心で、作品作りに苦労しながらも、終始なごやかでした。このような時間を共にすることで、私は元気をもらっているのだと思います。
集合写真バックは副島蒼海(種臣)の扁額、宿坊内には、立派な襖絵や上田桑鳩などの書がありました。ひたすら書き続けた2日間、3日目の午後は観光でした。
本の題字
ご近所にお住まいの宮永容子さんが出版されましたエッセイ集 「幸運の鍵」の題字を書かせていただきました。
表紙の絵は、大学生のお孫さんの作で、少女は、カメラを持った若い宮永さんのイメージだそうです。本文に挿入されている美しい写真は、ご主人の撮影とのこと、内容も、心温まるご家族との日常や旅行記です。私も、宮永ファミリーのお仲間に入れていただけたようで、お役にたてて嬉しいことです。
アクセサリーの販売
私の友人で歌詠みのすずらんさんの小さなショップ「アートセレクト すずらん」には、彼女の友人 翠扇さんの墨彩画に自作の和歌を書いたポストカードやカレンダー、シルバーアクセサリーなどと一緒に、私のハートのアクセサリーとボタンが販売されています。奈良市男女共同参画センター「あすなら」(JR奈良駅西口隣接)での「女性のチャレンジフェスタ」や、毎月第三月曜には「ならまち物語館」の手作り市「手作りの辻子」にも出店しています。
「ならまち物語館」http://www4.kcn.ne.jp/~nmc/ は、伝統的な町屋を修復した趣のある造り、ならまち界隈の散策にお立ち寄りください。
5月6月の活動
写真は、R工房からの初夏の風景です。
NPO法人「奈良21世紀フォーラム」http://www.h7.dion.ne.jp/~nara21cf/ 主催の「書くことは楽しい in 奈良」のイベントに、4年前から毎年、奈良女子大学書道部の活動の一環として参加協力、学外での発表の場となっていました。
これまでの様子 (PDF形式:389KB)
このご縁から、平城遷都1300年祭の特別事業 として開催される 「書くことは楽しい in 奈良 ~大仏さんにラブレター~ 」の運営に携わることになり、「遊印展」が終わってからすぐに、作品募集要項や審査基準などの作成に取り掛かりました。
書の専門家ではない法人の方々が、書の伝承と発展を願って「公募展」「ワークショップ」「トークショー」を企画されたことに敬服するばかりです。「公募展」発送書類の宛名書きは、奈良女子大学書道部員が筆ペンで書かせていただきました。目に留まるといいのですが・・・。
作品募集要項 (PDF形式:11KB)
審査基準 (PDF形式:5KB)
後援メッセージ (PDF形式:9KB)
事業内容 (PDF形式:16KB)
私のお便り (PDF形式:8KB)
遊印展の時に依頼のあった作品の、素焼きに刻した様子と、仕上がりです。「登勢」という方のお名前の印は、小篆・仮名・「登」の金文で3顆、作ってみました。
相変わらず、授業とボランティアの合間に、文房具を作っています。
呉須と銀彩による「円硯」と「水滴」、赤絵の濃淡も出せるようになった「印盒」です。
右の2枚は、成型して乾燥中の「水滴」と「印盒」です。今まではイメージデッサンを書いてみるように言われても、ないまま手を動かしていました。今回はスケッチブック(フランス土産)をいただいたので書いてみましたが、その通りにはいかず、作りながら変わってしまいます・・・。気ままな性格と作風は一緒ということでしょうか。
箱とシールができました!
陶印などを入れる小さな箱ができました。村田肇一さんのご好意で、村田オリジナルの裏がコバルトブルーの用紙で作らせていただきました。桜色のシールの「SAYURI creation」は、「アトリエテラ」の寺本雅子さんのデザインです。よくある書道用の印箱では相応しくないと思っていましたが、香水でも入っているかのような仕上がりです。中身の作品も、私自身も、エレガントに成長したいものだと思いました。
「箱崎竜平陶展 with 田上早百合遊印展」 奈良市
陶芸の師である箱崎先生から、アートサロン「空(ku)」の企画展に、君も出してよ、と言われ、先生が主宰されている「R工房」で制作した私の陶印などを並べていただきました。タイトルは、「箱崎竜平陶展 with 田上早百合 遊印展」、会期は、4月21日(水)~26日(月)でした。
アートサロン「空」 http://web1.kcn.jp/artsalon-ku/index.html は、近鉄「学園前」駅北口からすぐ(奈良市学園北1丁目)の閑静な住宅街の一角にあり、ギャラリー・お茶室・文化教室・カフェを備え、たびたびコンサートなども開催されています。6年前にオープンした時から、カフェでは箱崎先生のカップが使われていましたが、展覧会は初めてです。
連日大勢の箱崎ファンが詰めかけ、「R工房」ブランドのおしゃれなカップ&ソーサー・マグカップやピッチャー、銀座の料亭などでも愛用されている鉢や皿は、どんどんなくなり、毎日作品を追加されていました。併設の私の作品もたくさんの方々に見ていただく機会となり、焼き物の印や硯はあまり見たことがない、と関心を寄せていただき、嬉しく思いました。
鹿などの肖形印、寿などの吉語・十二支・いろは歌などを、素焼きした陶のオブジェ(雑形の印面)に刻し、箱崎先生と同じ顔料で絵付けをし、窯には先生の作品の隙間にいくつも入るので、一緒に焼いてもらっています。100顆余りの陶印をインスタレーション風に展示し、壁面が空いているので書作品3点と、陶硯などの文房具も少し並べました。
1年半前の個展の時の作品よりは、多作のため多少の技術的向上を感じてはいましたが、1週間も客観的に自分の作品を見ていると、次にはこうしたい、というイメージが次々と浮かびました。人目にさらすのもいい試練ですね、更なる成長を期待してください。
「R工房」の紹介
奈良の市街地から、東へ車で15分ほど行くと、水田やお茶畑の広がる高原(標高400~500m)奈良市田原地区です。この自然豊かな田原の里には、『古事記』の編者 太安萬侶の墓や奈良時代の天皇の御陵があり、陶芸や木工のアーティストの工房が点在しています。箱崎竜平先生の「R工房」も、その1つです。これらの工房や茶工場などは、「田原やま里博物館」として見学も可能、地域の伝統の技や文化に触れる機会を提供する、奈良市観光課「まちかど博物館」の一環です。どうぞ、お越しください。
私は、先生の絵付けのタッチが、前衛書か墨象のように思え、現代アートのようにも思え(下の写真)、長年親しんできた書の世界の広がりを体感しながら、自由に文房具などの制作をしています。
4月の活動
奈良学園書道室からの眺めです。新学期の授業は、今年度も週3日、4月7日から始まりました。
4月になって、にわかに19日搬入の「遊印展」の制作を開始、印の成型をし、乾燥したら「素焼き」→「刻す」→下絵を描き、施釉し「本焼き」→さらに上絵をして焼いた後、冷めて窯から出てきたのは、搬入前夜(穴窯の窯出しから帰った日)というぎりぎりの日程でした。
新作は60顆余りです。前作の「若草山鹿(ろく)図」の「鹿」の印が好評だったので、いくつか古文や図象の印を加え(写真1枚目)、『故宮博物館蔵肖形印選』も参考に模刻まがいの肖形印(写真2枚目)や、「寿」「福」などのおめでたい文字を刻しました。鹿の背中に福の文字を乗せた作品(写真4枚目)は、鹿(ろく)は禄(ろく)の音通で、「福禄寿」の意味です。今回のひそかなテーマは、山麓の鹿から、吉語としての鹿、でした。
2009年度「穴窯焼成」の窯出し
3月中旬に窯焚きをした「穴窯」の窯出しを、4月17日(土)・18日(日)に行いました。1200度以上の焼成に耐えた作品は窯変し、私達に多くの感動を与えてくれます。参加者皆で、窯から運び出した後は、グラインダーなどで棚板に付いたガラス状の灰を取り除く作業や、窯の掃除をしました。その後、各々の作品を前に、感想を述べ合い考察をするのが、恒例となっています。
最初から最後まで赤松だけを燃料として焚く「薪窯焼成」は、大変贅沢なものですが、間伐材を再活用して行っていること、仲間と共に協力してできたことが、意義深いことと思います。
自宅で撮った、今回の穴窯焼成の私の作品の一部です。1段目の焦げた感じの花器・水滴・文鎮(?)は、火袋の横に置いたものです。このスペースは、薪があたって割れる可能性があるため、お預かりした作品は置けず、希望者も少なく、私の好きな場所となりました。
2段目の写真は、自然の灰が掛った、掛け花入れと水滴です。赤貝の上に横にして窯詰めをしたため、貝の跡が残り、自然釉が横に流れています。いろんな角度から撮りました。
3段目の写真の、掛け花入れは、巻いた藁や、赤貝の跡が景色として残りました。赤土の水滴と印盒、白土の印盒と筆置きです。
3月の活動
上の雪景色は、山形の赤湯温泉の宿(友人の実家 「瀧波」 )に移動中、電車の中から撮ったものです。3月は、仙台経由で山形へ行き、成績を出し、伊賀で「穴窯」を焚き、月末には私用で福岡に行っていたため、あまり家に居らず制作は進みませんでした。福岡は満開の桜、九州国立博物館にも足を運びました。
三喜徹雄さんの個展
ギャラリー「オソブランコ」(大阪市北堀江)に、三喜徹雄さんの個展を見に行きました。私は、猫バッチ(写真5枚目)をいくつも持っている隠れファンですが、初めてお話をさせていただきました。物作りの心意気、アーティストの生き方や情動が、ストレートに作品に反映されていて、その飾らないお人柄そのままの作品が、殊のほか楽しいのです。
三喜さんは、1967年に結成された前衛美術集団「THE PLAY」の主要メンバーのお一人、近年は、ブリキやアルミの廃材を動物のかたちに加工したり、海岸で集めた巨大な流木を組み合わせたオブジェを制作されています。心を大きく揺さぶるものは、商品と見分けがつかないアートワークではなく、目前の素材を別のかたちに作り変えるという単純明快な物作りの原則を、ひたすら忠実に追求し、没頭する潔い姿勢にあることを、示してくださっている方だと思いました。小さな椅子(写真6枚目)を買いました。
2009年度「穴窯焼成」 窯詰めと窯焚き
NPO法人「Arts Planet Plan from IGA」の活動の一つである、陶芸自主活動グループ・粘土カフェの「穴窯焼成」は、今年度で5回目となりました。参加者の皆さんと共に活動を進めてきましたが、毎回試行錯誤の連続でした。私が担当した4年間、失敗やトラブルも含めて、ドラマチックで貴重な体験を語りつくせない程させていただきました。
今年度は、年間を通して13日の薪割りを実施、作陶会を経て、3月13日(土)、参加者21名の作品が持ち込まれました。引き続き14日(日)・15日(月)に窯詰めを行いました。
写真左から : 彫刻家 角谷さんの等身大のカバの頭部は、容積の約1/4を占領 / カバの両脇・手前に並んだ作品 / 窯詰めが完了し、ピース! / 入口の仕上げに、耐火モルタルを塗る学生ボランティアさん
窯焚きは、3月17日(水)10時に火入れをし、約100時間焚き続け、21日(日)14時半に窯を閉じました。時間帯によっては人手が少なく、動いていないと寝てしまいそうな時もありましたが、土日などには、参加者のご家族やお友達も来てくださり、総勢27名での窯焚きとなりました。
写真左から : 赤松の木っ端で500度まで上げました。焚き火の傍で / 焚き口からの投入となり、1250度を目指して / 顔と左膝がとてつもなく熱く、革手をし目だけを出して、交代で攻め焚きです。写真を撮る役の私を撮ってもらった希少な写真です。
薪棚に、念願だった屋根が付きました。用意した薪は550束以上、5日間で無くなりました。/ 手造りの輪っかです。投入後、50輪づつ紐でくくります。/ 左(1200度)と真ん中(1230度)のオルトンは倒れましたが・・・。/ 夜の窯。雨の日が2日あり、晴れた日は星がとても綺麗、手で掴めそうでした。/ 印象派の絵のような青空が一瞬、200m程向こうには近鉄「西青山」駅、窯からの景色です。夜明け時は、山の端が水墨画のように浮かびあがります。作業の手を止め、見惚れてしまうこのつかの間は、映画のワンシーンのようにも思うのですが、写真はありません。静寂の中の鳥のさえずり、始発列車のゴーという響きと共に、生涯忘れないことでしょう。
ギャラリー「迦哩迦」 山形市
山形市小白川町のギャラリー「迦哩迦」http://www.sam.hi-ho.ne.jp/kalika/index.html の企画展「暮らしを楽しむ作品展」のお仲間に入れていただきました。地元の金工作家の佐々木里恵さんの燭台やテキスタルハンガーなどと、箱崎竜平先生・村田肇一さんの器と陶の動物と一緒に、私の陶印や文房具も並べていただきました。会期は、2月18日(木)~3月7日(日)、三学期の授業が終わってすぐ仙台経由で山形に行き、最終日の会場を訪ねました。
お店は、オーナーのご主人のシルバーアクセサリー、陶器やガラスの作品、革や布製品なども常設で扱うおしゃれなセレクトショップで、これから私の作品も置いてくださるそうです。焼き物の印や文房具は珍しく楽しい、と言っていただき、作り続ける元気が湧きました。
東北への旅は、学生時代の書道部の合宿で夏の「蔵王」に行って以来でした。車窓からの景色はどこも美しく、初めて乗った仙山線の「山寺」駅で帰途には一人途中下車し、芭蕉さながら静けさと、寒さの中でボーッと山(写真左)を見ていました。
仙台では、宮城県美術館で折しも「高山登展」を見ることができ、物言わぬ物体300本もの「枕木」の作品の中に身をゆだねると、遠く幼いころからの時の流れを感じました。何にとらわれることもない私はこのままでいいんだな、などと解放された気持ちに浸っていました。
「墨と和紙のフェスティバル」に協力
文化庁の「文化芸術による創造のまち」支援事業「墨と和紙のフェスティバル」が、2月28日(日)、奈良市生涯学習センター(奈良市杉ヶ町)で開催されました。「未来に残すあなたの言葉」の公募作品の展示、書家 紫舟さんのワークショップやランプシェードづくり、書の体験コーナーなどがあり、たくさんの来館者で賑わいました。
私は、奈良女子大学書道部員5名と一緒に、「奈良うちわ」のコーナーを担当、顔彩なども用意してお手伝いしました。伸び伸びと筆を運ばせる幼い子供達から、たくさんの元気をもらいました。
第3回「書くことは楽しいin奈良」
奈良から書くことの楽しさを発信したいという、NPO法人「奈良21世紀フォーラム」主催の第3回「書くことは楽しいin奈良」が、2月19日(金)~21日(日)、ならまち界隈にある「なら工藝館」内のギャラリーで開催されました。私は、奈良女子大学書道部員などと共に、書作品の展示に協力しています。奈良の伝統的な匠の技である「墨」「筆」と50点ほどの書作品の展示、「デジタル書」の制作実演なども行われました。
今回は、平城遷都1300年祭に寄せて、私は、「鹿」の陶印10顆を「若草山鹿(ろく)図」と題して出品、布の大作3幅を企画しました。オレンジは奈良女子大学書道部員の寄せ書き、黄色は東大寺学園書道部員による古事記「大和は国のまほろば・・・」、緑は東大寺学園書道部の先生と私の合作、5mもあり人目を引きました。楽しく制作した様子が伝わりますか?見に来て下さった方々から、書道をしてみたくなった!と言っていただいたことが、何より嬉しいことでした。
1月2月の活動
お正月は雪の富山に帰省し、県立近代美術館でピカソなど20世紀美術の館蔵展を見たり、親戚のように親しくしている篆刻家 井谷五雲さんの個展に行ったりしているうちに、3学期が始まりました。
R工房では、山形での企画展が励みとなり、次々と、印や文房具・ハートのアクセサリーなどを作ってみましたが、頭の中が整理されていないことがよくわかる作品ばかりです。印50顆と文房具50点を揃えるまでは夢中でしたので、期限ぎりぎりに何とか山形に発送した途端、あたりの空気が春になっている!と感じました。
乾燥中の筆架など・素焼きに刻した動物などの印・本焼き前の下絵の様子、写真最後の2枚は、上絵の窯に入れる前の様子です。
平城遷都1300年祭奈良市市民連携事業「書くことは楽しい~大仏さんへのラブレター~」(主催:NPO法人「奈良21世紀フォーラム」)が、10月2日(土)3日(日)、県文化会館と東大寺東回廊を会場に開催されます。このイベントの一つである書作品の公募展に協力することになり、参考作品を書きました。淡墨で「和」の1文字作品、鹿の甲骨文字と「青丹よし・・・」の万葉集を万葉仮名で書いた作品、芭蕉の句「菊の香や奈良には古き仏たち」の漢字仮名交じりの作品です。
公募の対象は全国の高校生・大学生、テーマは「奈良の都に想いを寄せて」、サイズは半切1/2縦横自由、かつ文字数も自由とのことです。
台所のシチュ―やおでんを作る横で、穴窯に入れる作品を作りました。3月になると、学期末の諸々と山形行きの予定もあり、乾かす時間を考慮して2月中に仕上げたいと思い、わずかな時間も惜しんで制作するには、台所が最適でした。R工房で使用する粘土は磁土、こちらは、穴窯用の耐火度の高い陶土ですから、制作場所を変えた方がいいのですが、作るものは、大して変わりません。水滴・印盒・筆架・文鎮、十二支の文字を書いた皿の他に、アクセサリーやボタン、穴窯独特の窯変を期待して、掛け花入れ5つと長い花器と丸い花器なども作ってみました。
謹賀新年
奈良は、平城遷都1300年という記念すべき年を迎えました。奈良が好きで奈良に長く暮らしていますが、小さな驚きや発見をすることもしばしばで、未だに観光客のようです。それほど奈良は、文化と歴史の豊かな、魅力ある美しい所です。幸いこの地で、たくさんの方々との温かい交流もあり、恵まれている気持ちと同時に、私自身の力不足も感じますが・・・、今年も悩む暇もなく過ぎそうです。
写真は、昨年秋の2つのギャラリーでの展示の様子です。