「粘土カフェ」のこと

 「粘土カフェ」は、芸術文化の普及や振興を目的とするアート系NPO法人「Arts Planet Plan from IGA(伊賀市伊勢路)」内にあった陶芸自主活動グループです。

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 私がこの法人と出会ったのは2005年、下の子供が高校生になった春のこと、とあるギャラリーで「造形ワークショップ 穴窯づくりに挑戦!」のチラシを手にした時、作陶する機会はあっても窯を築く体験はそんなにできるものではない、と思ってしまった!ことに始まります。子育てが一段落した私は、泊りがけで8月のこのイベントに参加、初めてダイヤモンドカッターで耐火レンガを切断し、窯の屋根に登って釘を打ちました。この経験が新鮮で、穴窯に愛着も感じ、誘われるままに、翌年、法人会員となりました。
 間もなく、穴窯の維持と活用を目的に陶芸グループが発足、人材不足なのでしょう、主担当を仰せつかりました。京都にあった「哲学カフェ」に真似て、「粘土カフェ」と命名しました。

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 森林の保全のために出る伊賀の地ならではの赤松の間伐材を、焼成燃料として再活用しよう!という趣旨を掲げていたので、さあ大変。間伐材を調達し、運び込みと薪割りに汗を流すという思いがけない活動が始まったのです。窯や窯周りの修繕・整備なども、特定の指導者を置かず、時には必要に応じてご指導を仰ぐ程度で、仲間と共に知恵を出し合い協力して行なってきました。

 学生ボランティアさんを募り「薪割り合宿」を行なっていた頃は、毎年焼成、活気がありました。途中から2年に一度となりました。メンバーの高齢化は進む一方で、また色々な事情でメンバーは入れ替わりましたが、15年間で10回の焼成を実施しました。最後の焼成は、法人の解散を控えた2021年1月、コロナ感染症予防対策を講じながら行ないました。
 写真は、薪割り、薪棚、窯詰め、夜通し100時間焚き続ける窯焚きの様子です。

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 作陶会や陶芸の実技講習会も実施しました。15年間の活動の成果は、法人が主体となって開催してきた「芸術祭」での展示と、2017年9月、伊賀市に残る武家屋敷「赤井家住宅(登録有形文化財)」を会場に「穴窯なかまのカタチ展」(写真1・2枚目)で発表しました。
 また、アトリエ整備のために伐採した草木や廃材を燃料として「野焼き焼成」を2回行ないました。(写真3・4枚目)

 書道が専門の私ですが、元々工芸的な表現には興味があり、大学時代に陶芸に出会って薪をくべたことはありました。あの時は、人生の後半で本格的な穴窯を運営することになるとは、想像もしていませんでした。筆・墨・印刀を持つだけでなく、重い赤松の間伐材や薪束を運び、チエンソーも使うことになり、若い頃より力持ちになっていきました。まさかの展開ですね。
 作品は食器ではなく、水滴や印盒などの文房具、書作品の脇を飾る花入れを中心に制作、近年はお茶道具も試みています。

 窯焚きは、手探りの実験のようなものでした。原始的ともいえる穴窯や野焼きの焼成は、電気窯のように楽ではありませんが、独特の釉状・焼き色で応えてくれました。そんな手作りの陶芸の面白さを多くの方々に知っていただきたい、共に楽しみたいという気持ちで活動しました。
 失敗の繰り返しは貴重な体験となりました。そこから多くを学びながら、苦労の分だけ感動を経験したこと、どんな時も仲間に恵まれていたことは、私の人生の宝物です。