12月の活動
12月は、故郷富山に3回も帰省しました。秋口から遅い春まで、この季節の雪の庭でも、何かの椿が蕾をふくらませ、部屋を明るくしてくれるのは嬉しいものです。1つ目の花器は、私が作りました。実家では、父の他界に伴う香典帳を書くのが私の役目、祖父や祖母の香典帳を父が書いたのように、今度は私が父のものを書きました。ご挨拶状や宛名書きなどもし、また、奈良文化女子短期大学の短大フェスティバルのプログラムを書くなど、筆耕屋さんのようでした。
2011年は、不注意から松葉杖を経験したり、授業だというのに風邪で声が出なかった日もあり、ご迷惑をかけながらですが、存分に働くことができた1年でした!
11月の活動
秋の展覧会には、閉館前を狙っていくつも出向きました。京都国立博物館の「細川家の至宝」では、黄庭堅の行書の名品を見ることもでき、意欲的な「現代書」を発表している友人の個展やグループ展にも足を運びました。最も心に残っているのは、「東大寺ミュージアム」開館記念特別展です。力強い仏像郡に見入っていると、東大寺創建当時の願いが伝わるようでした。上の写真は、「東大寺ミュージアム」のある「東大寺総合文化センター」と、鏡池に鴟尾が写るので好きなフォトスポットで撮ったものです。
月末に開催された「大仏書道大会」の準備(看板を書いたり)をしましたが、特に制作らしいことをしないうちに、11月が過ぎてしまいました。
「大仏書道大会」開催
11月26日(土)・27日(日)、広大で荘厳な東大寺を会場として、「大仏書道大会 ~書くことは楽しいin奈良~ 」が開催されました。主催は、奈良の文化の発展を願うNPO法人「奈良21世紀フォーラム」(理事長:森本公誠東大寺長老)です。今年も、奈良女子大学書道部員と共に協力しました。
子供の頃から書道に親しんできた私にとって、今度は若者達のためのこのようなボランティアに関われることは、嬉しいことです。下のポストカードは、二月堂からの大仏殿、私の文字が印刷されました。
全国の高校生・大学生から公募した書道作品の中から入選作100点を、東大寺大仏殿西回廊で展示しました。仏典から題材を得たものや、震災復興の願いを自らの言葉で筆に託した作品など、若者らしい表現の作品が、約50メートルの壁面に並び、作品を見ていただいた方々から、感動したとの声も多く聞かれました。技術の競い合いではない、「大仏書道展」の趣旨が、伝わったでしょうか?
27日(日)10時より、大仏殿東回廊で、「席書会」を行いました。森本長老の法話のあと、「般若心経」より短い「華厳唯心偈」の写経と自由課題による作品の揮毫をし、大仏さまに奉納するというイベントです。参加者一同、大仏殿基壇に登壇させていただき(写真右は、奈良女子大学書道部の参加者)、読経の中でお焼香もしました。
私も高校生の頃に「席書会」に参加したことがあり、今でも覚えています。奈良ならではの東大寺での体験、参加者にとっても思い出に残ることでしょう。
「大仏書道大会」公募展の審査
「大仏書道大会 ~書くことは楽しい in 奈良~ 」の公募展には、北は北海道、南は鹿児島までの高校生・大学生から、1,201点の作品が寄せられました。11月4日、審査会を行い、特別賞7点を含む、入選作品100点を選考しました。
審査は、主催のNPO法人「奈良21世紀フォーラム」理事長の森本公誠東大寺長老、奈良県教育委員会(書道)指導主事の殿村孝平先生始め、法人の方々と共に行いました。上手さだけを取り上げて評価しない点が、この展覧会の趣旨、筆に託した思いが伝わる作品を選びました。
奈良女子大学書道部の「学祭展」
11月3日(木・祝)~5日(土)まで、奈良女子大学の学園祭が行われ、私が、講師をしている書道部は、期間中「学祭展」を開催しました。
先日、奈良テレビ局で書いた書道パフォーマンスの共同作品や、部員18名と私の作品40点を、学生会館2階ホールに展示しました。毎年恒例の、体験コーナーも設け、連日、家族連れ・書道部と交流のある方々やOGなどで賑わいました。
10月の活動
上の写真は、個展会場で、私の台皿に飾られた「秋」です。
授業を終えてからも工房で深夜まで作業をし、家では目録を作成しながら、個展の日を迎えましたが、たくさんの方々のご支援お力添えがあったこと、そのことを幸せに思います。
下の写真上段は、呉須による下絵の様子です。「日くれて天に雲なく・・・」は、私の今の心境のような陶淵明の詩、「野の花のように」は、尊敬する羽仁もと子の言葉、好きな書体で好きな文字や言葉を次々と書き、文房具などと共に、本焼き(写真下段1枚目)と上絵(写真下段右)の窯を焚きました。
奈良女子大学書道部が「奈良テレビ」に!
夕方6時~7時の「奈良テレビ」の番組、「ゆうドキッ!」の「Nara ナウ」のコーナーで、10月31日(月)、奈良女子大学書道部の活動の様子が放送されました。
10月14日のビデオ撮りを編集した映像は、3分程、学祭展のための作品制作の様子、その作品を協力しながら裏打ちをしているところや、部員がインタビューを受けるシーンもあり、後半の5分程は、書道パフォーマンスの生放送でした。下の写真は、この時の様子を私が撮ったものです。1枚目の2人が、部長と副部長、右の写真は、参加者10名とテレビ局の人と共に。
3年ぶりの個展
奈良国立博物館の北向かいにある、「飛鳥園 http://www.askaengallery.jp」別館の「茅葺ギャラリー」で、個展をしました。3年前の個展の後は、年に3回程度のグループ展を励みに制作を続け、この度は、ここ1年の作品を中心に、「近作展」と題して展示しました。
会期は、中間考査で授業のない頃にと思い、10月18日(火)~23日(日)まで、ちょうど気候のよい時季でした。たくさんの皆さんに見に来ていただき、ありがとうございました。挨拶文(PDF形式:111KB)夕暮れ時に会場を庭から見た時、このような趣のあるギャラリーで展示ができることが本当に嬉しく、贅沢なことだと思いました。
「飛鳥園」は、歌人 会津八一とも親交のあった「仏像写真ギャラリー」で、お店の奥の木立に囲まれたガーデンには、八一の歌碑もあります。この閑静なお庭に建つ「茅葺ギャラリー」は、バリ島から職人を呼んで葺いたという茅葺の天井、寺社の古材を用いた柱や、白い壁が、とても美しい建物です。この空間を壊さないように、会場の中央にテーブルを持ち込んで島を作り、壁面の2辺にはあえて低く毛氈を敷いた床をしつらえました。
壁面には、書作・板皿にもなる陶盤・掛け花入れ、島には、硯や水滴などの文房具と、イロハ歌を書いた豆皿・陶印など、床には、皿や鉢を並べました。屋外にも、大鉢と穴窯焼成の作品を展示しました。
作品の一部を紹介します。
「心」の字源は、右心房と左心房を象った心臓(ハート)の象形ですが、その意味と造形が好きで、今回も、盤皿(写真1枚目)などに登場です。
さらに「心」の甲骨文字にもある、「ハート」を書き始めた時、現代アートにも詳しい箱崎先生が、「今度は、ジム・ダインのぱくりかな?君らしい伸びやかなハートだね!」と言ってくださったので、皿や湯呑みにも描き、文房具の意匠として、硯や筆架などにも用いました。ボタンやアクセサリーも「ハート」型のものが多いです。
この度の会場は、鹿が訪ねてくる奈良公園の中にあり、鹿の甲骨文字による書作2点と、「鹿」の印をたくさん並べてみました。昨年の平城遷都1300年紀に、鹿の古い文字や図象の印(磁印)を「若草山鹿(さんろく)」というシリーズで刻し始めましたが、鹿は、祿(俸給の意)の音通として、鹿鹿(ろくろく)と重ねて押印しても、大層おめでたいそうです。
2つ目の写真は、鹿の背中に「福」の印を乗せ、「福禄(ふくろく)」と読み、「さいわい」と題した作品です。「百寿印」も作っていますから、さらに「寿」の印も押すと、「福鹿(祿)寿」となります。漢字の「形・音・義」の楽しみは尽きません。
書は、「何を書くか」が、大事だと思っています。この点、中国文学者の福本雅一先生が義父のように私の身近にいてくださるので、題材はいくらでも訊けるではないか、とよく言われますが、かえって、真に理解しない漢詩など、書く気持ちにはなれないものです。
「のらりくらり」は、私の日常から出た言葉です。夫の代名詞だと説明すると、田上君の坊主頭のような「の」だ、と言われて、思いが表現できたかと、嬉しくなりました。一方、元管理職にあった年配の方が、これからの人生訓にする、と言って求めてくださった時は、驚きました。「何を書くか」は、やはり大事だと思いました。
粘土で形(立体)を作り、色を使って絵付けができるのは、平面の書作にはない、工芸の楽しみです。下の写真上段は、「秋草文」を描いた作品、皿や文房具(印盒・水滴・花器にもなる筆筒)です。制約のある文字とは違い、自由に空間を作りながら絵筆を動かすのも楽しいものです。
写真下段は、土が柔らかい内に、花模様のレースの布を当てて素地に凹凸を作り、凸面に呉須や銀彩をあしらった「レース文」の作品、草書の「花」の盤皿や40㎝程の長皿、文房具などです。
9月の活動
9月は行事が目白押しでした。R工房では、百舌鳥(もず)が鋭い声で啼き出し、気が付くと秋の気配です。
下の写真は、箱崎先生とのコラボの作品制作の様子です。この大きな鉢(花器)は、素焼きの段階で、口径50㎝高さ21㎝もあります。器の内側に、呉須で「日々是好日」と書きました。私の出番は、この30秒程・・・、重いので施釉は先生です。一気に、釉薬を均一に掛けなければなりません。窯の上段に載せて、窯詰めです。(写真3枚目)
このような共同作品は、皿・鉢・湯呑みなど、個展用にたくさん制作しました。
東大寺学園の文化祭の前日、書道部の展示を見せてもらいました。下の写真左の3枚は、風岡君(高校2年生)の創作作品、1つ目は「人の短を道(い)う無かれ己の長を説く無かれ」、2つ目は『荘子』胡蝶の夢、3つ目は『老子』無用之用、です。自分の好きな語句を、囚われない伸びやかな線で書いています。私も、このような書きぶりでありたいものだと思います。
右2枚の写真は、奈良学園登美が丘校の文化祭の展示の一部ですが、書道部がなく、授業のものです。中学1年(書写)は、初めての行書で、名前の一字を書きました。高校1年(芸術科書道)は、『蘭亭序』より四字句を臨書した色紙に、自作の印を押しています。
'11「風と土のかたち」展(伊賀)
9月17日(土)~25日(日)まで、NPO法人「Arts Planet Plan from IGA http://www.appfi.org/」主催の、'11「風と土のかたち」展が開催されました。法人の根拠地近くの、廃校になった小学校(伊賀市矢持地区市民センター)を会場に、法人会員と関係者など(今年は62名)の作品を、一堂に展観する大規模なグループ展です。
会場入り口の看板(縦・横2点)の揮毫は、私のお役です。大きい横物(天地90㎝横270㎝)の方は、洗面器に墨汁を入れ、口径約7㎝の大筆を、バットのように握って書きました。いくら大きくても、書くこと自体は短時間です。何が大変かというと、用紙を広げるための部屋の片づけと、墨を大量に含ませた後の筆を洗うのに、想像以上の時間がかかることです。
法人は、今年で設立10周年です。私は7年前から参加し、主に「穴窯焼成」の活動をしています。この展覧会には、毎年、陶芸作品や書作を出品していますが、この1年私は何をしてきたのか、何を見てもらえるのか、と振り返って考えるよい機会です。書壇には属していない私にとって、ジャンルの異なるたくさんの方々との交流、作品を前にお話のできるこのような発表の場を、大切に思っています。
今年は、新作の「文房具」と、「陶印」を並べました。
会場の様子です。3枚目の写真は、万華鏡を覗く来館者、初日には、ギャラリートーク(4枚目の写真)やオープニングパーティーがありました。秋らしい銀杏の作品に見とれました。
また、会期中、竹工芸(蕎麦ざるづくり)の実技講習会、地元の山桜でスプーンをつくるワークショップ、木材さん http://mblg.tv/kuzugyan/ のパフォーマンス(ライブペインティング)など、多彩な催しがありました。
個展の案内状
作品はまだこれからも作りますが、案内状ができました。前回の個展のタイトルは、「田上早百合のかたてま展」でしたが、いろいろとご意見をいただき、今回は、無難に、「田上早百合近作展 -文具・陶印・陶盤など- 」としました。
育児も介護も孫の世話もないのだから、好きなことを思う存分したらいいと言う家人の応援と、師や仲間に恵まれ、(仕事はフルタイムではないので)時間の許す限り、自由に制作をしています。一人文化祭か学芸会、元気にしております、という報告会のようなものですが、お立ち寄りいただけると幸甚です。
信州・原村にて
弟 石田歩の「図画工作展」と題した大規模な展覧会が、この夏三ヶ月間、信州原村の村立「八ヶ岳美術館」http://www.lcv.ne.jp/~yatsubi1/で開催されていたので、会期末となった9月3日、原村を訪れ、美術館近くのペンションに泊まって、高原の魅力を満喫しました。
美術館は、カラマツ・赤松・白樺の林の中にあり、ユニークなデザイン、建築家村野籐吾の晩年の傑作とのことです。中には、原村出身の彫刻家清水多嘉示と書家津金隺仙の作品、縄文土器が常設で展示されています。原村は、縄文文化が栄えた所だったのですね。
原村に移り住んだ多くの人の中でも、カナディアンファームhttp://www.go-canadianfarm.com/のオーナー「ハセヤン(写真右)」とお話しする機会に恵まれましたが、森の「ものづくり」がいっぱい詰まったライフスタイル、勇敢でおもしろい人でした。広い敷地にはいくつも手作りの大胆な建物や、ツリーハウスも燻製を作る窯もあり、レストランではもちろん手作りの石窯で、収穫された野菜やお肉やパンが焼かれます。この日は、クラフト市をしていました。
1枚目の写真は、美術館の企画展「石田歩の図画工作展 -謎のトロッコ島建設2011-」の会場入り口、向こうから歩いてくる地味な工作員が本人です。「トロッコ島」は、画家の作る大きなおもちゃのようなもので、この夏の建設で12作目、制作は公開され、秘密基地建設のワークショップに参加したり、中に入ったり登ったりして楽しめますが、会期終了後には、解体廃棄されるそうです。
写真2段目のような工作物は、展示台に載る大きさで、どこに収蔵しているのでしょう、いくつもあります。この他に、電車やバスなどの乗り物・ラジオやカメラのミニチュアなど、彼の好きな物ばかり、たくさん展示されていました。さらに壁面は、工作少年の夢を具現化した絵画や半立体作品などで埋め尽くされ、弟は、こんなことをするために生まれてきた子なのだろう、と思いました。
8月の活動
この年になってやっと「茶の湯」に少し興味を持つようになり、お盆に帰省した時は、実家にあるお道具や本を新鮮な思いで見ました。茶花用に椿も植えられている畑では、11月からの炉のために「湿し灰」を作っているところでした。(1枚目の写真)
田舎の茶室らしく、自慢は「煤竹」で葺いた天井です。農家からいただいた竹を家族皆で洗った幼い日、北アルプスの雪解け水の冷たかったことを思い出します。両親は、私の書を床に掛け、小さな「印盒」を「香合」に使ってくれることもあるようです。「茶の湯」のおけいこは向いていないかもしれませんが、これから茶道具を作れるかもしれません。
ピアノの椅子をヒントにした「墨床」や、水滴・印盒などを作りました。写真は、本焼き前の下絵の様子です。
書道部の合宿(奈良女子大学)
8月22日~24日、鳥羽湾を一望できる岬の宿で、奈良女子大学書道部の合宿を行いました。私は今年、あいにく日帰りの参加となりましたが、東大寺学園の書道の先生と、同校元書道部の大学生の応援もあり、例年とは一味違った学習と交流の機会となったようです。
参加部員は13名、集中講義などで合宿には参加できなかった部員も含めて、作品は、11月3日~5日の「学祭展」で展示します。
個展のDM用写真撮影
8月17日、個展の案内状用の写真を撮りました。カメラマンは、子供の頃からカメラいじりが好きだった弟(画家の石田歩)です。代表作などないんだろ?と言われ、カタログのような案内状ではなく、また前回同様ゴチャゴチャ、になりました。(下の写真は、私のカメラで撮ったものです。)
ここに写っている文房具を中心に、盤皿のような陶板のようなもの、器に書作したもの、壁面には、茶掛けのような書作や掛け花入れなども予定しています。
おまけですが、下の写真は、歩の展覧会に時たま登場するカメラシリーズの作品の一部です。3枚目の「マメックス2003」は、幅3㎝ほどのペンダント、限定品の1つを私の娘が大喜びで付けていたものです。
弟のカメラ好きは、小中学生の頃、大糸線や北海道にSLの写真を撮りに出かけた頃に始まります。押入れを暗室にしていました。あの少年の頃と変わらず、絵を描き、工作をしています。趣味が仕事になっている人はいるが、僕は趣味をしているだけ、とこの日ものんきなことを言っていました。
書道部の合宿(東大寺学園)
8月1日~3日に行われた、東大寺学園書道部の合宿のお手伝いをさせていただきました。写真1~3枚目は、古典の「臨書」に取り組む中学生の様子、ここでは、先生のお手本を写す姿はありません。「創作」は、自ら選んだ語句の、古典から「集字」した資料(写真4枚目のスケッチブック)を、全員が作って持っていました。それを元に「自分の作品を作る」というやり方です。
夜にはOBや高3生も集まり、批評会などで切磋琢磨しながら、作品ができていくようでした。筆で表現する行為を心から楽しんでいる様子は頼もしく、暑い最中に、さわやかな気持ちになりました。
7月の活動
中旬から夏休みになりました。写真は、夏の休暇ならではの風物詩、この景色はアートだ!と思わず写真を撮らせていただいたお料理(いか墨味のスパゲッティのような素麺)と、八坂神社の祇園祭献茶会で拝見した涼を誘うギヤマン切子の器です。
R工房では、素焼きをした、硯・水滴・印盒などの文房具、陶板や皿などがたくさんたまりました。呉須と鉄で下絵を描き、個展のDM用に、小物のみ施釉して、本焼きと上絵の窯に入れてもらいました。下の写真は左から、本焼きの窯詰めの様子、手前の硝子盤は銀彩・金彩、そして上絵の窯詰めの様子です。
続 佐々木さんの穴窯
5月末に雨の中で行われた佐々木淳さんの穴窯焼成のその後ですが、水蒸気の多い状態で、長く1100度台で焼成するとどんな状態か、勉強の機会にしたいと思っていましたが、窯出しに行くことが出来ず、窯の中は見ることができませんでした。
温度計の温度は1190度以上を記録しなかったものの、実際の窯の中は、思ったより掛った灰が溶ける状態だったようです。クッキーのような部分もありましたが、緋色も出ていました。あんなに薪をくべたのですから、それなりに穴窯は応えてくれたのだと思います。私の作品の一部です。
豆皿に「イロハ歌」
6月中旬のことですが、箱崎先生の陶芸展(大阪豊中のギャラリー)搬入のお手伝いをした帰り、たまたま伊丹市立美術館の「石川九楊展」に行きました。代表作「源氏物語」の他に、「盃千字文(盃ひとつに千字文の一文字づつを呉須や赤絵で書き綴った千の盃)」の大作を見た箱崎先生が、君もできるよ、やってみよう、とおっしゃって、豆皿をたくさん挽いてくださいました。
とても贅沢な書戯といわなければなりません、素焼きの素地に呉須で「イロハ歌」を書くのに、5分もかかりませんでした。筆に任せて伸び伸びと描いたつもりでしたが、文字の持つ造形に囚われてしまうのは習性でしょうか。上手く焼けたら、個展で並べますので、ご批評ください。
6月の活動
写真は、R工房(奈良市田原)からの夕焼けと、穴窯仲間と薪割りをしている時に、賄い当番さんが作ってくださった「蕗おむすび」です。あちこちで蛍を見たり、初夏の風情と薫りに癒されながら働きました。
雨の日は、木々の緑は一段と美しく、気持ちも落ち着き、一人書斎で墨を磨り、落書きのような書作をして過ごすこともありました。吉川春陽堂さんに、できてもいないのに、個展会場の壁面に飾る書の表具のお願いに行き、プレッシャーだけは万全です…。
頼まれて、短冊ほどの小さな作品「平常心是道」を書きました。R工房では、飽きることなく、水滴・硯や陶板(写真は裏)などの成型をしていました。
「大仏書道大会」のチラシ
NPO法人「奈良21世紀フォーラム」主催の「 書くことは楽しい in 奈良」プロジェクトは、今年から「大仏書道大会」という名称となり、11月26日・27日に開催されます。
私は、法人の会員ではないのですが、5年前から、奈良女子大学の書道部員と共に運営に協力しています。チラシの題字を書きました。盧舎那仏の眼前に、自作の書が印刷されるなどとは、僭越至極のことと思っています。また、封筒の送り元の上に、今年は「大仏書道大会ご案内」と入りました。多くの方の目に留まり、書に親しむ機会としてご参加いただければ嬉しいです。
「定礎」の揮毫
奈良学園郡山校は、2年前に改築され、続いてこの3月に格技場、5月末に体育館が完成しました。校舎建て替えには、設計の段階から、生徒のアイディアが随所に採り入られています。建物の「定礎」の文字も、本館(楷書)・格技場(隷書)・体育館(行書)共、生徒の揮毫によるものです。私が担当している芸術科書道の授業は、高校1年時のみ毎週2時間続きであり、各自が得意な書体で「定礎」に挑戦、これら3点を採用しました。
また、格技室入口の「柔道部」という看板も、書道を選択していた当時柔道部員の刻字作品です。書作した文字をひし彫りし、カシューを塗っています。在校したよい記念になりますね。
5月の活動
写真は、連休中に訪れた若草山からの景色です。夏には鹿の背中の「鹿の子」は綺麗になります。
美術館・図書館へ行っても、折々のお出かけに何を見ても、自然と作品のネタ探しをしています。奈良国立博物館の特別展「誕生!中国文明」に行きました。やはり中国の歴史は壮大、常設でも「青銅器」のコレクションはありますが、「九鼎」を見たのは初めてでした。制作中の「足付きの円面硯」は、この「青銅器」の脚台や、「獣足」などのたくさある古代の円面硯を、私流にアレンジしたものです。といっても、どこが?と言われそうですね。
NPO法人「奈良21世紀フォーラム」主催の「書くことは楽しいin奈良」のイベントは、今年は「大仏書道大会」という名称となり、11月に行われます。チラシの題字を頼まれました。活字よりやっぱり筆文字はいいね、と言っていただけたらいいのですが・・・。
箱崎先生の注文の器の「表書き」(粗供養・寿・御祝など)の揮毫は、いつも私の仕事です。また、「自ら生きて活きる」は、奈良学園登美が丘の「建学の精神」です。座談会用にと頼まれて、休み時間に、渡された色紙に書いたものです。
佐々木さんの穴窯
穴窯仲間の佐々木淳さん http://www.geocities.jp/atsu_maru_55/parktop.html が、陶芸用粘土の製造・販売をしておられる西浦商事さんの窯を借りて、一人で穴窯焼成をされるというので、お手伝いをしました。私の作品(水滴・印盒や花器など)も入れてくださいました。佐々木さんが睡眠を取っていらっしゃる間は、私が一人で窯を焚きました。
窯詰め(5月23日・24日)も窯焚き(26日~30日)も、26日以外ずっと雨、終盤には台風も到来して、ドシャ降りの中での作業となりました。薪が濡れたことと、気圧のせいでしょうか、応援の方のご協力もむなしく、どんな工夫を試みても1190度から上がりませんでした。穴窯の窯焚きは、これまで毎回順調ではなかったものの、目標温度1250度に達っしなかったのは初めてで、終了の決断はつらいものです。このような経験も、活きることがあるでしょうか・・・
4月の活動
私の授業は、7日から始まりました。写真は、その日の奈良学園郡山校本館入口の桜です。昨年9月から、奈良学園登美が丘小学校の書写も担当しています。児童達の笑顔、元気な生徒達、部活では多才な学生達からエネルギーをもらって、今年度もスタートしました。
小学校の先生の依頼で、「国語科通信」と書きました。時間をかけないで書いたためか(時間をかけても同じかもしれません)、気になる所が多々ありますが、使っていただけるのは嬉しいことです。R工房では、タタラ技法で筆筒・花入れや掛け花入れ、紐作りで円面硯などを作りました。
唐津焼の見学
私用で福岡に行った折、唐津まで足を延ばしました。市街地から少し離れた里山にある、中里隆氏・太亀氏の工房「隆太窯」を訪ねました。小川のせせらぎと野鳥のさえずりに包まれた、緑豊かな敷地には、2つの登り窯・陶房・ギャラリーなどが点在し、のどかながら洗練された感性が伝わりました。ここから生まれる器であることに得心もし、唐津焼の魅力と飽きない安らぎを覚えました。
唐津駅から徒歩圏にあるレトロモダンな建物を2つ回りました。1つは、座敷に仕組まれた能舞台と美しい杉戸絵や斬新な欄間の残る「旧高取邸」、2階の格子窓越しに唐津湾が一望できました。もう1つは、東京駅を設計した唐津出身の建築家「立野金吾」監修の「旧唐津銀行」、この春復元され、オープン記念の「唐津焼展」を見ることができました。
また、夕飯をガイドブックにあった豆腐店でいただきますと、たまたま店主と同席し、中里隆氏と懇意であることを知りました。料理がほとんど隆氏の器に盛られて出てきたので感激、料理が引き立つ唐津焼でした。
「蕎麦猪口」の絵付け&「手打ち蕎麦の会」
泥獎鋳込みによる薄物磁器を得意とされている陶芸家・余部一郎先生は、NPO法人「Arts Planet Plan from IGA(伊賀市西青山)」の実技講習会では、お馴染みです。「電動ロクロ」のわかりやすいご指導も、私には向かない気がして身に付かず、「鋳込み成型」の技法に至っては原理が理解できない、という不肖の生徒です。
先生の旧宅で、「手打ち蕎麦の会」があるというので、事前に行われた「蕎麦猪口」の絵付けの講習会には参加していました。デザインや日本画などが専門の人もあり、様々な「蕎麦猪口」が並びました。4月16日の「手打ち蕎麦の会」の参加者は20人余り、土間の台所にある再生した年代物のかまどを使って蕎麦を茹でました。
会場となった余部先生の旧宅は、大阪環状線JR福島駅から徒歩4分、築100年の古風な日本建築で、展覧会や落語の会に貸し出されています。敷地内の別棟が、先生の工房です。
以前から、母屋に飾ってある「扁額」を読んでほしいと言われており、何と書いてあるかを、本文・落款・印ともに訓読し、旧字体や篆書の説明を交えて、この日、皆さんの前で発表しました。できの悪い生徒の私にも、お役に立つことがあるものです。他に、橋本関雪の作品もありました。
桜づくしのお茶会
京都洛北鷹ヶ峰の常照寺では、4月10日、恒例の「吉野太夫花供養」が行われました。境内には、江戸時代初期の島原の名妓・吉野太夫の墓所もあり、太夫を偲んで本堂では追善供養の読経や現役の太夫さんによる献茶や舞、多寄せのお茶席があり、花づくし桜づくしの華やかな催しでした。
満開の桜の元、野点の席はこの季節ならではの楽しみです。本席・煎茶席とも、私の興味は、お茶のお味より、お道具の意匠や取り合わせ、床飾りの趣向です。特に、目立つものはないと思いましたが、それが、よいのでしょう・・・。また、春らしい来訪者のお着物や和菓子、草花にも、季節の美しさを感じました。
「常照寺」から歩いて3分程の所に、「光悦寺」があります。境内はひっそりとして、楓が薄く天を覆い、7つの茶室の佇まいは、寺らしい雰囲気を感じさせない山荘の庭園のようでした。この鷹峰三山の南麓一帯に、本阿弥光悦は一大芸術村を築きました。粋な茶宴も催したのだろう、などと当時に思いを巡らせながら、日本の伝統文化と春を愛でる一日を過ごしました。
3月の活動
今年度の授業は8日で終わりました。写真は、3月上旬に訪れた奈良市東部の「月が瀬梅林」です。毎年3月には、これまで4年間、伊賀の法人仲間と陶芸グループ「粘土カフェ」の穴窯を焚いていましたが、今年は実施せず(来年3月となり)、例年になくのんびりとした春休みとなりました。東大寺二月堂修二会の勤行に、今年は震災復興の祈りを重ねたのは、私だけではなかったと思います。
遅い春の気配を感じながら、R工房にも通い、穴窯仲間の佐々木淳さんから、5月の 窯焚きの応援の依頼があり、私の作品も入れてくださるというので、自宅では、穴窯用の作品を作りました。その作品と陶板などの絵付けの草稿の一部です。
2月の活動
雪国育ちの私は、2月の積雪に、子供の頃に返ったようにウキウキと、カメラのシャッターを押していました。鹿のバックは若草山&雪を被った奈良公園浮御堂です。自然現象は時には残酷ですが、折々に美しい。春の訪れを告げる花「梅」が咲いていると、気持ちだけは、自然美を師と仰ぐ、と言った魯山人の心境で観察しました。日本画や中国書画に「梅」はたくさん題材となっていますが、私の「陶板」にも、抽象的な意匠となって使えたら楽しいな、と思いながら・・・。
先月書いた「卒業証書」原版の印刷ができたので、名前や生年月日などの揮毫をし、水滴や印盒の成型をしました。
実技講習会「竹細工」
NPO法人「Arts Planet Plan from IGA(伊賀市西青山)http://www.appfi.org/」は、会員と一般も対象に、年4回の実技講習会を行っています。これまでにも、陶芸や染色など興味のある内容の時には参加し、ものづくりを楽しんできました。2月20日(日)は、地元青山の竹を切り出して竹細工をされている方のご指導の元、竹籠編みを体験しました。
竹をなたで割り、材料づくりから学ぶところが、当法人らしいこだわりです。当日は、予め籠を編む材料は用意していただいてあり、底を編む(写真3枚目)までは快調でした。しかし、四隅で立ち上げ(写真4枚目)、角度を変えてそのまま側面を編んでいくのが、意外に難しく、全員未完成のまま1日が過ぎました。写真右は、やっとここまでできた私の籠です。
バレンタイン・フェスタ★2011
2月11日(土)~19日(土)、奈良学園登美が丘校では、小・中・高校の実技系(音楽・美術・技術・家庭・書)の教師による「ミニコンサート」(会期中4回)と「作品展示」を、校内のサイセンスホール・サイエンスラボで行いました。生徒の発表ではなく、教師の発表を、生徒が鑑賞する機会は珍しいと思います。「バレンタイン・フェスタ★2011」と名付けられ、日頃の授業では伝えにくい、発展的な演奏や作品を通して、実技教科への生徒の興味を引き出そうという目的です。古川校長もチェロ演奏でコンサートに出演、他にも有志の先生方の作品出展もあり、盛り上げてくださいました。
私は、書と篆刻の額装作品や文字のある陶器以外に、「暮らしに活かす筆文字」をテーマに、私がタイトルを書いた本やポスター、文字がデザインされたTシャツ、校訓を書いた竹刀袋などを展示しました。
1月の活動
3学期の授業が11日から始まりました。
開校3年目の奈良学園登美が丘校は、初めての卒業式・卒園式を控え、楷書は得意ではないのですが、卒業証書・修了証書の原版を書きました。パソコンの賞状もある昨今、このような仕事こそ、書を学んだ者の役割と自覚するようになりました。上の写真は、賞状などを書く時に使う愛用の小筆、台湾の友人の特製品です。中国や日本のものとちょっと違うフォルムも気に入り、DMの撮影に用いたものです。
また、奈良学園(郡山校)剣道部の「面タオル」の文字を書きました。「不動心」は、ご指導されている西野先生のお好きな言葉だそうで、行書でという依頼でした。賞状の揮毫を頼まれると、「私の字でいいんですか」と必ず言いますが、このような仕事は、「いつまでですか」と聞き、喜んで引き受けます。
R工房では、年末に作った陶板・皿や水滴などの素焼きをし、小物だけ本焼き(下の写真左の2枚、呉須と鉄で下絵)ができました。さらに、扇型や短冊型の陶板や、硯などの成型をし、乾燥中です。
今までは、ぶっつけ本番の絵付けでしたが、今回初めて陶板については、型紙を取りました。絵付けの草稿を練ろうと思い、「琳派」の図録を開くと、ながめているだけで幸せな時が流れました。大胆な構図は自由で、浪漫を感じます。また、創造することの喜びに溢れたルーシー・リー展(東洋陶磁美術館)、京都国立博物館の「筆墨精神」、指物師川本光春さんの茶道具展など、見ることに余念はありませんでしたが、陶板の絵付けの構想はなかなかです。
年のはじめに
明けましておめでとうございます。隷書で「美意延年」と書きました。美しいと思う心があれば長く生きられる、という意味のおめでたい言葉です。美を愛する心をいつまでも持っていたいと思って書きました。
思うところがあって、大学生活7年目の1978年、古家をみつけて一緒に住んでいた学友と奈良県文化会館で撮った写真を載せました。この頃の気持ちを、変わらず持ち続けたいという思いを強くしています。写真2枚目は、9月のグループ展、穴窯焼成の作品や上絵をした文房具。下の写真は、11月の学祭展で、書道部員やOGと一緒に。
うさぎ・うさぎ
今年の干支「うさぎ」の、身近にある作品です。1枚目の写真は、篆書と図象の印のある私の作品「卯」、2枚目は、私の蓋付きの「陶硯」の摘みに、村田肇一さんのうさぎが付いています。3枚目の「陶のうさぎ」は、村田肇一さんの作品、全国展開されていますので、ご覧になった方もあるでしょう。右の写真は、箱崎先生のうさぎの絵付けのある重ねられるカップです。